新しい時代に向けた新しい牧会を

   153共同体としての教会 ①
 
「私はグラミン(Grameen)教会を夢見る」

長老会神学大学 教授 _ オ・ギュフン


現代教会の問題は共同体としての生き方を失った教会構造に起因します
21世紀に入り、教会のリバイバルが沈滞期を迎えています。これは韓国だけではなく、全世界に現われている現象です。ペンテコステ系の教会を除いた、ほとんどの教会が減少傾向にあります。これは、非常に攻撃的な宣教戦略により世界各地に広がり続けているイスラムとは対照的です。
教会が弱体化した原因は、全般的な社会変化にあります。今までの歴史を振り返ると、一人当たりのGDPが2万ドルを越えると、教会成長が鈍くなるという報告があります。韓国も2011年度に2万ドルを越え、韓国教会が弱体化したことと関係があるように思います。人々が神を信じて教会に通うようになった主な動機の一つが、世の中で成功し、楽に生活することだったため、そのような欲求がある程度満たされた瞬間、これ以上神に熱心に仕える理由がなくなってしまったのです。
しかし教会の弱体化は、根本的に教会そのものに原因があります。すなわち教会が教会らしい姿を見せていないため、世からの信頼を失ったのです。教会が教会らしくない姿を見せたのは、昨日今日のことではありません。2,000年における教会の歴史においても、いつも当面の問題でした。異端教派の問題をはじめ、道徳的な緩み、教権主義、聖職売買、物質主義、世俗化などの問題が、つねに教会の内外で続々と起きていました。これらの問題の根本的な原因を一言で規定するのは難しいですが、21世紀の韓国教会で一番決定的な要因の一つは、教会の大型化です。そういう訳で、現在の教会における問題点を解決するためには、何よりも教会の規模について扱うことが必要だと思います。
したがって、2回にわたって世俗的な姿を見せる大型教会の代案として、グラミン(Gra-meen)教会を紹介しようと思います。これはただ大型教会のための代案を示すだけではなく、世の中に存在するすべての教会を霊的に活性化させることのできる方法だと思います。もちろん大型教会は必ず消えなければならないということではないという点を、あらかじめ明確にしておきます。それは、大型教会が大切な役目を果たしていることも明らかな事実だからです。
グラミン教会の概念を紹介する前に、まず教会の本質についての話から始めようと思います。
教会は生きた共同体の見本となるべきです
主が復活されてから始まった初代教会は、AD 313年ローマのコンスタンティヌス大帝のミラノ勅令によりキリスト教がローマの国教と公認されるまで、あらゆる迫害を受け、世の中と戦いながら、信仰の本質を守って成長し続けてきました。ところがローマの国教となってからの教会は、少しずつ信仰の力を失って世俗化してしまいました。教会の監督たちの権威が強まり、地位が高くなるほど、教会のリーダーは世俗化していったのです。
一般的に世俗化の過程には、お金と権力が深く結びついています。その堕落が深刻になり、キリスト教の内部では世俗化を防ぐ方法として修道院運動が起こりました。修練を通じて個人の霊性を守る道を選んだのです。修道院が教会を聖めるのに少しは役立ちましたが、巡礼者たちの寄付で土地や財産が増え、とうとう修道院も堕落してしまいました。ところがその結果、卓越した修道院が登場しました。清貧と純潔、従順を強調し、極端な苦難と修練を強調する運動が起こったのです。私たちがよく知っている聖フランチェスコがその代表的な人物です。結局、教会が信仰を維持するためには、教会のリーダーが修道士のような生き方をしなければならないことを示したのです。
教会は神に召された人々の集まりです。この世に聖なる神の御国をなしていき、その神の御国を拡大するという目的を持って存在しています。そういう点から、教会は、何よりもまずこの世において聖い姿をもって存在することが目的です。この世の光と塩になるという神のみことばは、行い(doing)以前に存在(being)としてその本質的な価値を現すことを意味します。一言でいうと、21世紀の韓国教会が聖さを失った原因は、行い以前に存在に問題があったからです。したがって教会は、何よりもまず存在価値を回復しなければなりません。その存在価値とは、御国の共同体として、世の中で聖く生きていくことです。
筆者の修道院共同体の研究によると、修道院の核心を大きく三つに要約することができます。それは敬虔、関係、そして物質的な物です。敬虔は神との霊的な関係を意味し、信仰者の根本といえます。これは私たちの信仰生活の中で最も価値を持つ部分でもあります。人と関わる前に神の御声を聞き、神に従う親しい関係を、毎日の生活の中で実践する霊的な生活が必要だと思います。二つめに、関係性はともに暮らす人々との成熟した親密な関係を示しています。生活の内容として見ると、ともに生きていく共同体の構成員との生活です。お互いに愛し合い、励まし合い、慰め合いながら、時に葛藤や不和が生じても、ともに生きようとする姿勢を決してあきらめないことです。三つめに、物質的な物は、調逹、使用、所有など、神の前と、人との間での聖い倫理に関するものです。共同体性を保って生きていくためには、これら三つが徹底的に生かされなければなりません。
この共同体の観点から今日の教会の姿をみると、この共同体と今の教会との間には、大きなギャップがあることに気づきます。教会は主にささげる礼拝を中心にし、なんとかその共同体性に応じています。礼拝は非常に大切ですが、生活の代わりにはなれません。そのため、生活と礼拝が同じであるということは、聖く生きることの大切さを指すのと同時に、生活と礼拝の間に生じるギャップを説明してくれます。しかし自由民主主義及び資本主義社会における教会の中で、聖徒のすべてが共同体のメンバーとして生きていくことは決して簡単ではないでしょう。
もちろん世の中には、まだまだアーミッシュ(Amish)派のように現代文明の制度と文化を世俗的なものとして拒否し、世の中と歩調を合わせずに信仰の共同体を保って生きている人々もいます。彼らの生き方もそれなりに尊重されるべきだと思います。
筆者は、この地でいわゆる教会と呼ばれている、各教会のかたちとして存在しているプロテスタント教会を念頭に置きながら、次のように提案したいと思います。 教会はどんな方法であっても共同体性を回復して、強化しなければなりません。一般的な教会の存在は、礼拝、教育、宣教、交わり、奉仕の五つに分けられます。現代の教会が、その役割を果たしているのは事実ですが、共同体の観点から見ると中身が抜けているとも言えます。すなわち、現代の教会が信仰的な行いとしては五つの機能が実践されているかも知れませんが、生活の面ではこの共同体性は失われたままの状態で存在しているのです。

共同体の本質を維持するには150人ほどの規模が適当です
筆者は、教会が共同体性を回復して強化していくために 、153人の共同体教会を提案したいと思います。
153人という数字は、ペテロがつかまえた魚の数字からきています(ヨハ21章)。ペテロが獲った魚の数字が153匹という聖書の本文は、いろんな意味で解釈できます。その解釈の一つは、一人の牧師が仕えることのできる教会の大きさについて象徴的に教えているとも解釈できます。しかしその意味が正確かどうか神学的には明らかでありません。そこで筆者は、そのような教会をグラミン(Gra-meen)教会と名づけました。これについての詳しい説明は、次のようなものです。
筆者の研究によると、153人という数字はさまざまな領域で実証的な価値が検証されています。すなわち一つの組職や共同体は150人ほどを維持するとき、その存在の意味を実現することができ、最高の効率的価値を現します。人類学的にも、150人は本物の共同体をなすことのできる最大の人員です。共同体をなすという意味をもっとも簡単に説明すると、メンバー一人一人が互いにすべて分かち合うことのできる最大数が150人なのです。言い換えれば、150人を超えると、同じ共同体に属していながらも互いに分かち合うことのできない人々が生じるという意味です。
人類学的に種族(clan)は、150人で成り立っている集団を指します。この規模の集団は、祭礼(ritual)機能を果たすのに最大の人員という点で重要な意味を持ちます。神話を聞かせたり、先祖の伝統や価値を子孫に伝えるなど、あらゆる祭式が一度で可能な規模が150人です。これは共同体性を維持していくために必要な祭礼的な機能ができる規模を意味します。また人類学の研究資料をよく見ると、地域に形成された村の構造の大部分は、150人ほどの規模だったということがわかります。
そのほかにも、150人の共同体の力ある動きを裏付ける資料が多くの分野で見られます。軍隊の戦闘単位の中で一番効率的な規模は、中隊(company)であり、160人で構成されます。中世時代から今まで存在する軍隊の単位を見てみると、ほとんど120~200人の間であることがわかります。これは統計学のわずかな誤差範囲内にある規模です。この規模は、戦地で互いの命を保護しながら一緒に争うのに一番適した数字でもあります。モルモン教のリーダーだったブリガム・ヤング(Brigahm Young)が5,000人の信者を導いてイリノイ州のレイクシティーを発ち、ユタ州に移住する過程で、多くの問題が発生しました。彼は問題を解決するために人々を150人単位のグループに分けて移動し、共同生活で起こるさまざまな問題を解決したのです。ドイツのフッター(Jakob Hutter)が立てた、プロテスタント共同体の子孫たちは、いまだに 150人の共同体をなして生活しています。
150人の共同体の不思議なパワーは、経営学的にも証明されています。アメリカのデラウェア州にあるゴア社は、創始者のウィルリアム・ゴア(William Gore)が創業当初から150人の共同体の概念を持って運営してきました。名刺には会員とだけ書かれてあり、役職や部署は書かれていません。組織としての社長はおらず、利益を上げるためのアドバイザーだけがいます。しかも予算や戦略計画もなく、給料も集団の話し合いで決めます。会社の建物は150人の共同体性を維持するために、いつも1,400坪以内で建築しました。会社の成長と拡張は、まず駐車場に150台が止められるように作り、後に駐車の空間が足りず、芝生に車をパーキングするようになった時に判断します。単純すぎる方法に見えるかもしれませんが、これこそ確かな方法かもしれません。ところでこの会社の離職率はアメリカの全土の会社の平均の1/3に過ぎず、35年連続で純利益を出しています。新技術の開発を通じて毎年10%ずつ成長を続け、大学卒業者たちが最も就職したがっている100大企業に15年続けて選ばれています。


オ・ギュフン
延世大学経営学科卒業。長老会神学大学院牧会学修士取得。Princeton Theological Seminary 相談学修士 / Chicago Theological Seminary 牧会学博士 / Northwestern University 牧会相談学博士 / 米Lakeview長老教会副牧師、韓東大学教牧室長及び基礎学部教授、里門洞教会主任牧師を経て、現在、長老会神学大学牧会相談学教授。その他、牧会専門大学院長、生涯教育院長、リーダーシップアカデミー院長、韓国牧会相談学会総務、学術委員長などを兼任。著書に『もう一度始める祈り』『情と韓国教会の成長:韓国人の関係文化と牧会及び相談的含蓄性』がある。翻訳著書に、『初心者のための対象関係心理治療』『最高のグループリーダーへの道』がある。

 

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