喜びの霊性⑤

   近くにいる人を愛する喜び ③
 
カン・ジュンミン ● ニュー・ライフ・ビジョン教会 主任牧師


あるがままの姿を受け入れ成長するまで待つ
パウロは、ピリピ教会の人々の中に神が良い働きを始められたという確信があったからこそ、ピリピ教会の聖徒を愛することができました。「あなたがたのうちに良い働きを始められた方は、キリスト・イエスの日が来るまでにそれを完成させてくださることを私は堅く信じているのです」(ピリ 1:6)。
ピリピ教会の聖徒は、成長しきっていませんでした。しかし、パウロは、彼らのあるがままの姿を受け入れ、期待を抱きながら見守ってきました。パウロがピリピ教会の聖徒に対して確信と希望を抱くことができた根拠は、彼ら自身にではなく、彼らの心の中に働かれる神にありました。
私たちの中で良い働きを始められたのは、神です。私たちは人を見て、その人自身よりもその人の中で働かれる神を見なければなりません。その人をさらに美しく変えてくださる神に焦点を合わせてください。パウロは、ピリピの教会を始めたのは、自分ではなく、神であることを忘れませんでした。神は、決してあきらめたりはされません。イエスは、私たちのうちで始められた良い働きを完成させるときまで、良い働きを続けられます。神は、始められたことを途中で止められたりはされません。時には、私たちを励まし、叱り、私たちの周りの状況を把握し、調整して、私たちを導いてくださいます。
パウロは、人の心は神が働かれる最も驚くべき舞台であると言っています。私たちのすべき最も重要なことは、私たちのうちに働かれる神に、働く機会をゆだねることです。神が私たちのうちに働かれるとき、聖霊によって私たちが罪人であるということを悟らせてくださいます。また、悔い改めに導き、神に対する飢え渇きを与えてくれます。さらに、自己中心に生きてきた自分の姿を悟らせてくださり、神中心、隣人中心に生きる祝福を与えてくださいます。
ある日、パウロは自分の中には良いものがないと悟りました。したい良いことは行えず、したくない罪を犯す自分の姿を見て、嘆きました。しかし、その絶望の中でも良いことを始められた方を見つけることができました。「私はキリストとともに十字架につけられました。もはや私が生きているのではなく、キリストが私のうちに生きておられるのです。いま私が肉にあって生きているのは、私を愛し私のためにご自身をお捨てになった神の御子を信じる信仰によっているのです」(ガラ 2:20)。
パウロは、自分のうちにイエスが生きておられるということを悟りました。私たちのうちには、イエスが住んでおられます。聖徒たちに接するたびに、その聖徒の中にイエスが住んでおられるという確信を持って見てください。大きな変化ではなくても、罪を憎む心が芽生えたならば、それは神が私たちのうちに良いことを始められたとという証拠です。それだけでなく、良いことに対する思いも芽生えたなら、神が私たちのうちに良いことを始められたのだと確信することができます。みことばが読みたくなり、祈りたくなり、人を神に導きたいという思いが生まれたなら、聖霊が働いておられるのです。祈っているときに、助けが必要な人の顔が浮かび、その人のために祈るならば、聖霊が私たちのうちに驚くべきことをされているのです。
私たちの周りの人を変える神の働きは、まだ終わっていないことを覚えなければなりません。彼らには、「工事中」という立札が立てられているのです。ですから、根気よく見守ってあげてください。しかし、私たちは、これまで人がどのように変えられてきたかを喜ぶのではなく、これからどれほど変えられていくべきかに目を留めてしまいます。それは、私たちの最大の失敗です。ですから、不平不満が限りなく生まれるのです。変えられていない部分に焦点を当て、それが全部変わるまで愛さないために、不幸になるのです。変わらない部分をも受け入れ、愛する訓練をしてください。変わらないものを愛することは、知恵です。アメリカのある庭師が、タンポポの除去について農林省に手紙を書きました。「タンポポを除去する方法を全部試し、また国の刊行物で紹介された方法も試しました。しかし、まだタンポポはなくなりません。」返事が来ました。「すべての方法を使っても、まだタンポポがあるのなら、すべきことは一つです。タンポポを好きになってください。」
このタンポポの話のように、神が送られた人々は、私たちの愛の対象であって、変えるべき対象ではないのです。私たちの最大の悲劇は、人の悪い部分を直すことに人生の目標を置くことです。私たちにできることは、ただ愛することだけです。そうすれば人は変わります。愛には、理解が必要です。人があなたを傷つけたとき、なぜその人がそうするしかなかったのかを考えてみてください。その人の中に、どのような傷があるのか、探ってみてください。そうするしかなかった理由がわかれば、その人を理解し、愛することができます。
それでも、愛することができないときは、どうしたら良いのでしょうか。次のみことばに答えがあります。「私が、キリスト・イエスの愛の心をもって、どんなにあなたがたすべてを慕っているか、そのあかしをしてくださるのは神です」(ピリ 1:8)。
キリストの愛の心を持って愛してください。身近に私たちを苦しめるような人が現れることもあります。どの方法を使っても、その人を遠ざけることはできません。このとき、残った方法は、その人を愛の対象として考えることです。リチャード・ボンブラントは、次のように貴重な忠告をしました。「あなたが、敵に対して少しずつ憎しみを育てることで自分自身を殺したくなければ、あなたの敵を愛するほかに方法はない。」
どのようにして、敵のような行いをする人を愛の対象とすることができるでしょうか。それは、キリストの愛の心を持って接するほかありません。この愛は、私たちから出てくるものではありません。イエスが持っておられる、無条件の愛なのです。この愛は、努力によってできるものではありません。聖霊が注いでくださるものであり、それによって可能なのです。「この希望は失望に終わることがありません。なぜなら、私たちに与えられた聖霊によって、神の愛が私たちの心に注がれているからです」(ロマ 5:5)。
神の愛は、努力して得られるものではありません。日々、聖霊が私のうちに働かれて、心に注いでくださるものなのです。神の愛は、私たちのうちに、私たちを通して働かれる聖霊の御業なのです。

欠点をおおい、祈る訓練をする
近くにいる人を愛する最も良い方法は、その人のために祈ることです。その人の欠点をおおい、肯定的に祈ることです。パウロもピリピ教会の聖徒のために、喜びを持って祈りました。「あなたがたすべてのために祈るごとに、いつも喜びをもって祈り」(ピリ 1:4)。また、このようにも祈りました。「私は祈っています。あなたがたの愛が真の知識とあらゆる識別力によって、いよいよ豊かになり、あなたがたが、真にすぐれたものを見分けることができるようになりますように。またあなたがたが、キリストの日には純真で非難されるところがなく、イエス・キリストによって与えられる義の実に満たされている者となり、神の御栄えと誉れが現されますように」(ピリ 1:9~11)。
悪い人間関係を良い人間関係に変える最良の方法は、相手のために祈ることです。その人に感謝して、祈ってください。その人の欠点をさらけ出すのではなく、その人のために祈ってください。批判する代わりに、その人のためにとりなしの祈りをささげ、短所や欠点が見えてもさばくのではなく、それさえも受け入れ、愛することができるように祈ってください。その人が成長するようにも祈ってください。祝福し、感謝して祈るならば、変化の奇蹟が起きます。その人が変わるというよりも、その人に対する私自身の心が変わるという奇蹟です。
近くにいる人を憎みながら生きるには、人生はあまりにも短いものです。神が私たちの近くに送ってくださった人を愛し、喜ぶことができなければ、私たちの人生は不幸なものになってしまいます。これが、愛する技術を学べなかったために生じた問題ならば、神はその責任を私たちに問われます。自分の力で愛することができないなら、キリストの愛の心をもって愛してください。聖霊を通して神の愛を注いでくださるように祈ってください。
正しく考えてください。いつも感謝してください。何よりも耐え忍んでください。しかし、ただがまんしているだけでなく、近くにいる人を好きになり、愛してください。一度心が変わると、人生のすべてが変わります。
幸せな人は、自分のものでないものに恋焦がれながら生きたりはしません。自分の持っているものを楽しみ、さらに喜ぶことができます。幸せな人は、愛してはならない対象を慕い求めながら生きることはありません。顔と顔をあわせながら愛し合い、お互いを慕い、恋しがることができるならば、それはすぐれた愛の技術を持っているということです。見慣れた相手の中にも、いつも新しい変化を見出し、その新しい発見を喜びとして考えることができる人は、幸せな人です。決して変わらないだろうと思われる人をも抱き寄せて愛し、徐々にその人が変わっていく様子を見て、隠れた所で涙を流し、喜びを味わうことのできる人は、幸せな人です。
愛は苦しみです。しかし、それは愛のために味わうきよい苦しみです。喜びをもたらす苦しみであり、幸せな苦しみなのです。愛がもたらす苦しみを捨てることは、愛がもたらす喜びをも捨てることです。十字架の愛も苦しい愛でした。しかし、十字架のその愛は、全人類に喜びの贈り物をもたらしました。苦しみの入った十字架の愛を通して、深い喜びを満喫してください。

 

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