キリスト者学生会 主事 ● 大嶋重徳
若者が教会にいなくなったと言われて久しい。しかし、現代においても彼らに最も関心のある宗教はと問うとキリスト教がトップに来る。ではなぜ、彼らは教会を訪れないのか。 現代の若者の多くは、チラシやポスターだけによる伝道集会の案内には無関心だ。しかし、人間関係を重んじる彼らにとって、自分の友人が信じているものには少なからず興味を持っている。この場合、友情が深ければ深いほど、キリスト教に対する抵抗感は無くなる。むしろ親友の大切にしているものに対して、ノンクリスチャンである彼らが注意深く、「俺なんかが行っていいの?」と気遣いまでしてくれる。 大切なことはクリスチャンの若者が自分の友人を教会に誘おうと思うかどうかだ。しかしクリスチャンの若者にとって教会に誘った親友が、教会に居心地の悪さを感じたり、あるいは礼拝中に退屈そうな顔をしているのを見る時、彼らの心は痛む。そして「教会はもういいよ」と親友から断りの言葉を聞いた時には、自分自身の存在を否定されたようにも感じる。そして「教会に誘うことが自分達の友情を壊すのでは」と、その友達を教会に誘うことはしなくなるのだ。それでも、「伝道しようよ」と促された時、けなげに彼らは考える。そして、誘った人が二度と教会に来なくても、自分達が傷つかない程度の知人だけを誘うようになるのだ。「大切な友人ほど誘いにくいのが教会だ…。」そう言った言葉を私は聞いた事がある。鍵はクリスチャンの若者なのだ。 では、我々はどのようにクリスチャンの若者と関わればよいのか。パウロは「若い男は兄弟と思い…諭しなさい」(Ⅰテモ 5:1~2、新共同訳)と、若者を自分と同じような兄弟、つまり大人として扱いなさいと勧めている。若者はその途上で大人になるべく信仰を得ていくために、教会の交わりで大人として認められることが必要である。 私が高校生の頃、教会で牧師が辞任する事態が起こった。その時、私の教会学校の先生で、さらに教会の執事をしている方が、「しげちゃん、教会のために祈ってくれへんか?」と言われた。「俺もな、良かれと思っていろいろやってきたんやけど、でも間違ってたこともいっぱいあると思う。俺のためにも祈って欲しいんや」と私に声をかけてきてくれたのだ。私はその時、拙い言葉であったけれども、それでも精一杯、祈った。祈り終わった後、その人はこう言ってくれた。「ありがとう。しげちゃんは俺の友達やからな。」私からすると、友達だなんてとても言うことの出来ない存在。むしろ、自分の信仰を育ててくれた人である。その人が自分を「友達」と呼んでくれ、自分の祈りが教会の役に立っていることを味わせてくれた。そして私は、自分の友達を「この人なら安心して紹介できる」と思い、私の友への伝道は始まった。 大切なことは若者に敬意を払い、尊敬の念を持っていることだ。「現代の若者は、ぱっとしない」と大人達が言わないことが大切だ。 若いマルコがパウロの宣教旅行の途中で何らかの理由で挫折し、召しを放棄して帰ってしまった時に、バルナバはマルコを諦めなかった。そしてパウロと別れてまでマルコの挫折に付き合った。若者と行動を共にするとき、生まれてくるのは失敗である。私達はその失敗に付き合う覚悟があるかどうかが問われてくる。 しかし、自分達もまた「ぱっとしない」若者であった筈なのだ。それにも関らず、深いうめきをもって取り成してくださった聖霊なる神の働きと、自分のことを諦めずに祈り続けてくれた先輩によって、私達は今も尚クリスチャンでいられている。私達もまた教会の中で、自分好みの若者クリスチャン像を若者たちに押し付けるのではなく、今すでに与えられている若者たちの存在を感謝し、彼らが教会が大好きになるように関わることだ。彼らが友人を連れてきたくなる存在に、私達自身が「なる」ことが大切なのだ。 是非とも若者たちを家に招いていただきたい。現代、家庭の壊れている若者達が増えている。クリスチャンホームであっても冷え切った家庭は余りにも多い。彼らに「神の家族」のあたたかさを味あわせてあげて欲しい。自分の親だけしか見えていない若者に、主が与えてくださるバラエティに富んだ豊かな将来を見せてあげて欲しい。そしてそこでの交わりに、信仰生活の成功談は必要ない。必要なのは失敗に満ちても尚、主のあわれみによって「何とかやっていける」クリスチャンをさらけ出してくれる存在こそが、若者達の傍らで大きな励ましとなる。 効果的なイベントに頼ることよりも、もっと聖書的で実際的な若者伝道がここにある。若者の側で失敗に付き合う大人達の存在、若者の傍らで真剣に主に従っていく大人達の存在こそが、次の時代に骨の太い、息の長い信仰が継承されていく鍵なのであり、若者伝道で一番問われていることなのだ。
大嶋重徳 1974年京都府生まれ。16歳の時に洗礼を受ける。1997年にキリスト者学生会の主事となる。2003年に神戸改革派神学校を卒業後、主事に復帰し、現在、関東地区主事。2児の父。趣味は料理。年間200名を越える若者が夕食に来る。
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