愛の交響曲⑤

   完全な愛
 

完全な愛

ハ・ヨンジョ

オンヌリ教会主任牧師

今回は「完全な愛」に関してお話しします。愛には完全なものと不完全なものがあります。人間の愛は不完全なものです。しかし、神の愛は完全です。神の愛には傷や欠点がなく、欠けたものもありません。一時の愛ではなく、永遠の愛であり、変わることはなく、真実な愛です。

人間の不完全な愛
国語辞典での愛の表現は多様ではありません。ギリシャ語や英語は状況によって愛の表現が多様です。
一つ目は、動物的な愛(エロス)です。これは肉体的な愛、本能的な愛、性的な愛を指します。
二つ目は、このような動物的な愛より高尚で純粋な人間的な愛です。人間を動物として扱うのならば、動物的な愛し方をすることでしょうし、人間を神の被造物としてみるならば、その人は人格的な愛し方をすることでしょう。
この人格的な愛は大きく二つに分けることができます。一つは、友情(フィリア)です。この単語はよみがえられたイエスとシモン・ペテロが会ったときの対話の中に登場します(ヨハ 21:15~17)。イエスはシモン・ペテロに「ヨハネの子シモン。あなたは、この人たち以上に、わたしを愛しますか」と、神の愛(アガペ)という単語を使って言われました。しかし、ペテロは「はい。主よ。私があなたを愛することは、あなたがご存じです」と、アガペという単語の代わりにフィリアを使って答えました。「私はあなたを友情で、友人として愛しています」と答えたのです。イエスが2度目に聞かれたときも、ペテロはフィリアと答えました。そして3度目にイエスはフィリアを使って聞かれました。このようにフィリアはとても純真で美しい愛なのです。
もう一つの人格的な愛は、親の愛(ストルゲ)です。親の愛は無条件です。それは神の愛のようです。無条件で無限で犠牲的です。この愛が純潔で美しい理由は、神が私たちを無条件に愛してくださるというモデルであるからです。

神の完全なる愛
三つ目は、神の愛(アガペ)です。この神の愛を表現するときはほかの単語を決して用いず、「アガペ」という単語だけを使用します。これは無条件であり、犠牲的であり、投げ打つ愛を指します。そして、この愛は神だけにあります。
私たちはアガペによって愛されています。神が人間をアガペの愛で愛してくださったために、聖霊の力によってこの愛に倣うことができます。人間が神の愛に倣うとき、奇蹟やいやしが起き、祝福が与えられます。
第一コリント13章の愛は人間的な愛ではなく、神の完全な愛であり永遠の愛であるアガペを述べています。神の愛のモデルはイエス・キリストです。イエス・キリストの人生とことばの中には、神の愛がとけ込んでいます。イエスの中に神の愛の性格と本質を見い出すことができます。
これまで述べてきた愛を一つひとつ見てみると、「私にもできそうだ。人間にもできそうだ」と思われますが、人間はまねをすることができるだけで、神のようには愛することはできません。この愛を完全になされた方は、イエス・キリストのほかはいません。神の愛は親切です。相手が失敗をしても、尽きることのない笑顔で接します。人をねたまず、
自慢せず、高慢になりません。
「あなたがわたしを殴ったとしても、わたしはあなたを待ち、がまんをし、親切にします。あなたがどのような悪口を言ったとしても、腹を立てたりしません。」イエスの愛はこのようなものです。

「アガペ」を見せてくださるイエス
愛は礼儀に反することをしません。このみことばの中には「相手を傷つけない」という意味が含まれています。イエスの人生と言われたみことばを見ると、言いたいことは全部伝えながらも相手を傷つけていないことがわかります。悪意なく愛する心で語られたからです。
以前の私の説教を振り返り、「真理を喜ぶ愛」ということばのすばらしさをもう一度悟りました。私たちの愛には偽りや不正があまりにも多くあります。しかし愛は真理を喜び、すべてを覆い、すべてを信じ、すべてを期待し、すべてを耐え忍びます。
「愛は決して絶えることがありません。預言の賜物ならばすたれます。異言ならばやみます。知識ならばすたれます」(Ⅰコリ 13:8)。
預言は重要です。預言は未来のかぎです。しかし終わりの日には、預言はすべて成就します。預言の役割は終わります。異言も重要です。しかし、御国に行けば御国の異言があり、世の異言には意味がなくなります。知識は立派なものです。しかし、御国ではこの世の知識は必要がありません。

永遠に続く愛
では、永遠にまで持っていくことができるものは何でしょうか。それは、愛です。愛は今現在においても必要であり、未来においても、永遠においても必要です。神は愛であるからです。神がおられるところにはいつも愛があります。
この話を準備しながら、私自身を振り返りました。20年以上オンヌリ教会で仕えてきましたが、最近多くのことを悔い改めました。教会は大きく成長しましたが、私は教会員一人ひとりを見ることはできませんでした。わが教会の教会員が泣いている理由、苦しんでいる理由を知りませんで した。私にその時間や健康がないならば、ほかの方にお願いしてでもすべきであったのに、できませんでした。愛の足りなさのゆえです。
教会を始めた頃は、教会員とよく一緒に過ごしました。食事をともにし、家にも行ったり、話もよくしました。しかし、教会が少しずつ大きくなり、できなくなってしまいました。私に愛がなかったためにできなかったのです。
少し前、ある信徒のお見舞いに行きました。その日、私は透析をしたために体に疲労感があり、歩くのもつらいほどでした。しかし、長老たちと牧師たちとともに行ったのです。その方はまるで天使のような穏やかな顔をしていました。自分の病気を説明しながら、「おそらくこれが最後の手術になります。移植した臓器がうまく適合しなければ、死ぬでしょう」と言われました。数日後、その方が天の御国に行かれたということを聞きました。闘病生活をしながら、死ぬことを知りながら、どんなに不安だったことでしょう。あの日、私のつらい体を引きずってでも会いに行ってよかったと思っています。

すべてを完全にする愛
教会の成長も、愛がなければ意味がありません。有名になることも、富むことも、愛がなければ意味がありません。預言や異言は一部です。それらは完全ではありません。私たちは真理のすそをつかんでいるだけなのです。小さな一部を知っているだけなのです。愛がなければすべて中身がありません。
ある日、私は私がしている説教がみことばの一部分に過ぎないと悟り、とても恥ずかしくなりました。私は説教の準備もできず、ただ黙想し、祈りました。「というのは、私たちの知っているところは一部分であり、預言することも一部分だからです。完全なものが現れたら、不完全なものはすたれます」(Ⅰコリ13:9~10)。ここでいう完全なものとは何でしょう。愛です。一部分であるものは何でしょう。愛以外のすべてのものです。たとえすべてものを主の御名によってしたとしても愛がなければ、すべてはむなしいのです。

幸せな生活の条件
牧会において完全なものと一部分であるものは何か考えてみました。建物、いす、信徒の数、組織、システムなどです。これらのものは一部分です。オンヌリ教会が重要に考えている 「QT」「一対一」「スモールグループ」も一部分です。もっと掘り下げると、「ラブ・ソナタ」 「ビジョン教会」「CGNTV」「ツラノ書院」も一部分です。一部分が間違っているわけではありません。それらの働きは教会がなくなるまで続けるべきです。
では、この一部分であるものが完全になるためには、どのようにすればよいでしょうか。愛という接着剤が必要なのです。QTをすれば、涙という愛が与えられ、聖徒たちの態度が謙遜になり、親切になり、忍耐することができ、礼儀を重んじるべきです。
ラブ・ソナタも同じです。「韓国のクリスチャンが自費で来て、死ぬほど苦労して、韓国に戻っていった」ということを日本の方々が見るからこそ、感動し、愛を感じるのです。
皆さん、私たちは言葉と行動すべてにおいて愛がなければなりません。私たちがすることは一部分ですが、そこに愛が入ってこそ完全なものになるのです。家族関係も同じです。家、自動車、職業、名誉があるからといって家族が幸せになるでしょうか。すばらしい結婚条件がそろっているからといって、幸せなのでしょうか。そこには愛がなければなりません。親と子の間に愛があるとき、その家族は幸せになります。
社会も同じです。GNPが上がり、各経済指数がよくなったからといって幸せになるとは限りません。私たちの心臓に愛が流れなければなりません。政治にも、教育にも、経営にも愛が必要です。
神のために献身するときも同じです。キリスト教や教会よりも心の底からイエスの愛がなければなりません。イエスは「すると、王は彼らに答えて言います。『まことに、あなたがたに告げます。あなたがたが、これらのわたしの兄弟たち、しかも最も小さい者たちのひとりにしたのは、私にしたのです』(マタ 25:40)」と言われました。皆さんが愛に恥じない者になることをお祈りします。



 

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