地域に根ざす宣教 本郷台キリスト教会 主任牧師 ● 池田博
「それから、イエスは、すべての、町や村を巡って、会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいをいやされた。 また、群衆を見て、羊飼いのない羊のように弱り果てて倒れている彼らをかわいそうに思われた。」マタイ9章35, 36節
日本の教会のリバイバルを思うとき、私の心に響いてくるみことばは上記のイエス・キリストのことばです。このことばから教えられていることをお分かちしたいと思います。 まず心に留まることは、キリストは町々村々に出て行っているということです。キリストは会堂で教えるだけでなく、外に出て行って御国の福音を宣べ伝えたのです。人々の間に入って行かれたのです。パウロも「みことばを宣べ伝えなさい。時が良くても悪くてもしっかりやりなさい」(Ⅱテモ 4:2)と勧めています。 私たちの教会もこれまで様々な形で伝道を試みてまいりました。特別伝道集会を計画して、チラシを町中に配りました。ポスターをたくさん貼りました。特別講師をお招きしました。しかし、反応は今ひとつです。それでも、最初の頃は10人前後の新しい人が見えたりしました。しかしだんだん慣れて来ると、来る人も少なくなって、新しい人が1人も来ないということもたびたび出てまいりました。キリストの素晴らしい招きのことばをチラシに印刷して配っても人々の心に届かないのです。「すべて疲れた人、重荷を負っている人は、私のところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。」これは素晴らしい招きのことばです。しかしチラシに書かれただけのことばでは、イエス・キリストが今の自分と何の関係があるのか、その人を惹きつける接点がないのです。講師の名前が書かれてあっても、その人がたとえキリスト教界でどんなに名の知られた先生であったとしても、チラシの印刷だけでは行ってみようと言うまでにはなかなかなりません。また主催の教会名が書かれてあってもその教会がどんな働きをしているのか、社会で、人々の間で知られていなければ、教会の門はくぐりにくいのです。敷居は高いのです。ですから行ってみよう、というきっかけにはなっていかないのです。 私たちの教会ではある時から、思い切って大型トラクトを大量に買って地域一体全戸に配布をしてみようと試みました。それは確かにそれまでとは違ったインパクトはありました。数年間続け、そこから教会につながる人も起こされました。しかしどんなに町にインパクトを与えたとしても、そこに住んでいる人々との心と心のつながりにまではなっていきません。そこには依然として壁があるのです。 イエス・キリストは町に出て行かれました。そして一人ひとりと会われたのです。その人の心に届いていこうとされたのです。その人の必要に応えたのです。病める人にはその病いを癒してあげたのです。弱っている人を立たせてあげたのです。そしていのちの福音を語ったのです。そこから人々は救われていったのです。このイエス・キリストの人々へのアプローチの仕方こそ、私たちの伝道の模範であると信じるのです。 本郷台キリスト教会はこのイエス様の伝道方法を取り入れています。まず地域の人々のニーズに応えるため、そして、地域社会に根を下ろすために様々な働きをしています。幼い子どもを預かる保育園をしています。それは子育てに不安を感じたり、悩んだりして行き詰っている若いお母さんたちのためのものでもあります。お母さんたちの悩みを聞いてあげたり、一緒に祈ることをしてあげることで、何よりお母さんたちに届いていけるのです。そのお母さんたちの受け皿として、若いお母さんと幼い子どもたちを対象にしたラブリー礼拝を行なっています。そこから若いお母さんたちが救いに導かれていきます。 また、地域の知的障害者のために地域作業所を開いています。そこには近くの養護学校から卒業生が送られてきます。また区役所の福祉課から紹介されても来ます。通所者の皆さんに対して教会ではお掃除、食事作り、畑での野菜作りなどをしてもらっています。それは通所者にはこの上ないやりがいのある仕事で大変喜ばれています。自分たちがやっていることが少しでも人のためになっているというやりがいです。そして、何より親御さん方に喜ばれています。障害者を持つご家庭は親御さん方がいろいろな意味で十字架を背負っています。それを少しでも分かってあげること、そして届いてあげることがいかに大切かを感じます。そこから真の解決は福音にあることを証しする。そのようにして一歩一歩近づいていくのです。 こうした働きはみな福音宣教のためのパイプ役として用いられています。 人々はみな悩みを抱えています。助けてもらいたいのです。しかしなかなか出て行けないのです。悩みが深刻であればあるほど心開きにくいのです。それはこちらから届いていく必要があるのです。私たちの教会ではミニストリーという形でそれをしています。一人の人が重荷を持って働きをしたいという願いを持ったなら、教会はそれをバックアップするのです。そして協力者が起こされるように祈り取り組むのです。 今の時代は特に人と人の関係作りが大事な時代です。関係作りを通して伝道する。 こうした地に足をつけた地道な働きを通して、地域は動き変えられ、宣教は着実に進んでいくのです。
池田博 1937年、東京に生まれる。高校3年生の時、友人の誘いで教会に通い始める。1967年、東京聖書学院を卒業。1969年、借家から夫婦で本郷台キリスト教会の開拓伝道を開始。主のために始めた廃品回収を18年間行い、4年後に会堂建設。小学校のPTA会長3年間、民生委員9年間等、地域に根ざした牧会伝道を目指す。
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