文化を超えて働くみことばの力 丸山陽子●日本アッセンブリー・オブ・ゴッド教団
台湾は日本から非常に近い外国です。沖縄のすぐ隣に位置しています。私は台湾の台北で先住民の支援と伝道を行っています。彼らは台湾では「原住民」と呼ばれ、12部族に分かれており、長い間被差別民族でした。日本統治時代から山地に閉じ込められ、居住隔離政策が取られていたため、独特の言語、服装、生活習慣を今もなお色濃く残している人々です。けれども台湾の民主化の結果、近年若者を中心にその多くが山地から台北などの平地に仕事を求めて下りてくるようになりました。台北は華僑が住むアジアでも先進の国際都市ですから、原始的な文化や習慣を持つ原住民は歓迎されませんでした。 山地では早くからイギリスからの宣教師が伝道を開始し、山は福音化されたと言ってもよいくらい多くの教会が建てられました。けれども、原住民が平地に下りてきてからは、言葉も文化も違う平地の既成教会になじめず、教会から離れ、失業やアルコール中毒などの社会問題を抱えていました。 私たち夫婦は日本の神学校で出会いました。主人は原住民タイヤル族出身です。1985年卒業と同時に台湾に行き、結婚しその日から自宅を開放して開拓伝道を開始しました。こちらで2人の娘も生まれました。2人とも生まれた時には原住民と戸籍謄本に書かれました。 開拓伝道と同時に台北で暮らす原住民の生活の支援も開始しました。聖書の中にはイエス・キリストが多くの貧しい人や差別されている人、社会から疎外されている人の所に、自ら出かけて行って彼らを助けた記録が残されています。私たちもイエスの精神を模範に、NPO「台北原住民救済センター」を立ち上げ、霊的な面だけでなく、あらゆる面から台北での原住民の生活支援をしています。彼らにはお金や教育、そして仕事が必要でした。しかし、彼らが最も必要としていたのは台北において無条件に人として愛され、尊重されることでした。 教会も原住民の文化を取り入れた教会づくりを心がけてきました。できるだけ原住民族風の音楽や服装などを取り入れて礼拝をしています。彼らの理解できることばで聖書の言葉を教えます。 彼らの文化に最初は戸惑い、何度も失敗し失望しました。食事には度々何の動物か分からない肉が出され、有無を言わず食べなければなりませんでした。また私は原住民に嫁いだので、結婚してまだ1週間も経たぬのに、嫁として鶏やいのししをこの手でさばかなければなりませんでした。また、原住民は財産共有の文化を持っています。ですから、彼らが家に来るたびに、私有物がいくつもなくなっていました。最初は盗まれたと思い、彼らを恨んだりしました。また買い物で家を空けた時、家に帰ってみると、私のベットで全く知らない原住民の男性が寝ているを見て仰天してしまいました。こんな文化は私には到底慣れるはずがないと泣いた日々がありました。そんな私が、今は鶏もいのししも手早くさばき、全く知らない人の家のベットでもすやすやと眠れるまでに変えられました。 原住民の女性の多くが水商売や風俗業で働いています。彼らは生きてゆくために自分の尊厳を放棄しています。聖書の中には「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している」というみことばがあります。原住民の方はこのようなことばを今まで聞いたことがありません。タイヤル族のメイホアも、出会った当時、山に残してきた家族の生活を支えるため、ホステスの仕事につき、自暴自棄の生活をしていました。でも教会に来るようになり、自分の価値が神の目には非常に高価であると知った彼女は変わっていきました。そしてホステスの仕事もやめ、神学校に入り、今は私たちの片腕として同胞を助けるために自信を持って働いています。 台湾に来て、この聖書のみことばはどんな文化、人種の人々をも変える大きな力を持っていると改めて知らされました。日本は物質的には非常に豊かになりました。また欧米の文化を取り入れて個人主義的生活様式がすっかり定着しました。でも、今、私は原住民の生活の方が日本人より豊かだと感じます。なぜなら彼らは貧しい中でも、分かち合い助け合う文化を今も維持しています。そして貧しいからこそ、必死になって神を求め、大きな奇蹟を見ることができます。私は台湾にいて、原住民のために奉仕していますが、この奉仕は日本の福音化にもつながっていると思うのです。人は神によって誰か隣人のために奉仕できてこそ、本当の喜びを持った人生を生きることができると私は信じています。原住民から教えてもらった信仰の秘訣を日本に持って帰ることも私の大きな使命となりました。 南の国から日本のクリスチャンのために、教会のために祈っています。私たちの家族と働きのためにもお祈りください。
¦ 祈りの課題 ¦ 1. 宣教師家族の健康と安全のために。 2. 原住民の台湾での地位の向上のために。 3. 原住民神学校の運営と学生の学びのために。 4. 台北市原住民救済センターの運営のために。
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